※注意! このページは二次小説です!
本家 ニコニコ動画 ココロ/キセキ 様を元にした二次創作作品です。
そういったものが苦手な方はご注意ください。
また、本家様などから意見が着ましたら消そうと思います。
前回は弱音と小説だったので今回は鏡音と小説しました。
なぜかまたココロです。
書けそうな気がしたんで書いてました。
勢いって大事だと思います。
まぁマタなんですが、話の内容は本編だと思います。うん。
メルトらしい感じです。
ココロはハッピーエンドなんだ!
では。
「―――よし。できた」
OSは問題なく起動したのを確認する。
袖部分のディスプレイには光が奔り、機体の起動が行われている。
『……起動完了―――』
―――ィン、とヘッドフォンから微かに起動音をさせたその子が瞳を開いた。
僕に視線を持ってくるとフォーカスを合わせる。
その際のモーター駆動音はゼロ。
周りを見回す為に首を左右に動かす。この時にも駆動しているような音はしない。
まるで人間のような人形。
出来栄えを言うなら―――
奇跡。
僕はその子と目を合わせた。
「おはよう」
『おはようございます』
会話は正常。発音は少し怪しいがまぁすぐ何とかなるだろう。
「僕が誰だかわかるかい?」
『わたしの設計者です』
「そう、プログラムは正常に起動しているようだね」
『ノープロブレム。信号はオールグリーンです』
成功。大成功である。
この瞬間僕は大喜びして叫んだって構わない。
奇跡のロボットを生み出した。
でも―――
「君の、名前は……?」
『機体番号02-アールアイエヌ』
「……そう。君はこれから“鏡音リン”と名乗りなさい」
『了解。機体名“鏡音リン”登録完了しました』
「僕は、リンって呼ぶよ」
『了解。マスターからの呼称は“リン”とします』
「リン以外にも適当に呼ぶから」
『マスター、言葉が不明確です。全ての呼称を辞書データとして登録する必要があります』
「無い。君は学習ができるだろ?」
『了解しました。出来る限りの対応を実行します。
対応できない場合は直接入力していただくか一度“リン”と呼んでから―――』
彼女の解説は僕が登録したモノ。直接のやりようなんて僕が一番知っている。
機体は万全。生きているようにしか見えない瞳、顔、体―――。
でもまだ足りない。
一つだけ出来ない。
『マスター。次の命令をお願いします』
それは―――ココロというプログラム。
酷く冷たい気分になる。
やっぱりただの人形か、だなんて絶望したくなる。
でも。今までで一番成功に限りなく近い状態。
後は中身。それだけを精巧に組み上げる―――。
学習機能はつけてある。
それはとても曖昧な作りだ。
そのアルゴリズムは一言で説明すると、だ。
他人の真似をする。
人間の真似をさせる事で“らしい”動きを覚えさせる。
もちろん記憶や分析して言葉上人物を置き換えたりなどもする。
表情も記憶してトレースする。
そして―――僕はこれから暫くは、僕ではない人の真似をする。
その子は素直じゃなくてとても我侭だった。
そうだなぁ今の僕よりはずっと子供っぽい。当たり前なんだけど。
ああ、よく考えれば僕の方がよっぽど難しい事をしてるんじゃないか?
なんて、過去の記憶にニヤニヤとしながら彼女を見る。
彼女はそんな僕をみて無表情でとどまったあと同じようにニヤニヤと笑った。
「ぷっ変な顔っ」
『ではマスターも変な顔です』
無表情である。
怒っているように見えなくも無いが彼女に怒りの信号、思考は無い。
「はっはっは。僕は変じゃない。美しい顔だからね!」
『マスター。お言葉ですが貴方の登録した美しい顔には貴方の顔は含まれません。どーがんです』
「リンのくせにっ生意気っ」
『申し訳ありません』
僕の記憶の中のあの子の真似は難しい。
リン。僕と君は似てるけど、全然違った。
『マスター、泣いているのですか?』
「泣いてませんー。乙女の秘密が溢れてるんですぅー」
『?? マスターは男性だと記憶しています。乙女というのは間違っています』
さぁ―――過去と未来と君と僕が追いかけっこだ。
プログラムも組まなきゃ。俄然やる気が出てきた。
「リン、お茶~紅茶がいいな。砂糖とミルクは2つずつ。
キッチンにあるとおもう」
『了解です』
うわぁありえねー。
でも。今だけこき使ってやる。
ちょっとした復讐心。いや、悪戯心だ。
こんな気分になったのはいつ振りだろう。
彼女は歩いてキッチンへ行き、お茶を探しているだろうか。
……あったかなぁ……最近あんまり買い物にも出てなかったし……。
『マスター。キッチンが不衛生すぎます。
掃除を行いますので許可をお願いします』
「……リンはそんなしっかりものじゃなかったんだけどな……」
そう、彼女はもっと大雑把で僕任せだった。
当然掃除の役目は僕だったしお茶くみもそうだ。
『発言が小さく認識が不明慮です。もう一度お願いします』
うーん。思い出される日々。
少し涙が出そうだよ……。
彼女を作ったのは僕。
うーん。うーん……そう、少しぐらい理想に近くてもいいんじゃない?
「よし、頼んだ!」
ここはしっかりしてもらってもいいと思うんだ僕は!
『了解しました。清掃を開始します』
―――こうして。僕とロボットの生活が始まった。
彼女は優秀だ。
なんでも吸収する。文句も言わず従順に仕事をこなす……。
……違う。
彼女はそんなのじゃなくて。
教えてあげたい―――人の喜び悲しみ。
僕は―――
あの子を、作りたいのに……。
―――何度書き換えても、違う気がする。
こうじゃない。必ずこうしたらこうするという概念は無い。
人間は行動に順序を持とうとする。
だがどんなイレギュラーにも対応するし、類似経験から答えを作り出すこともある。
怒られたから泣くわけじゃない。逆切れもあればすねることも笑う事すらある。
その選択をさせるのは酷く難しい。
ランダムなんてものじゃなくて状況に応じたもの。性格を作らなければいけない。
今は行動を記憶させそれを最適化してプログラムに直させる事で行動パターンは増やさせている。
それによって擬似的な性格は出来るかもしれないがやはりオカシイことが多い。
下手すると同じ事しか繰り返さない人形になってしまう。
それを避ける為に―――
「ありがとうリン」
「ありがとー! リンちゃんっ!」
「サンキュー、リン」
「お疲れ様リン。ありがとう」
僕は一度も同じありがとうを言わないことにした。
今は命令を待つようにしてあるが何れは命令を待たずに思考させるようにする。
そのおかげか最近は―――、
『マスターの行動には統一性がありませんね』
という分析結果を戴いたのだ。
こちらとしては良しという結果である。
……ココロは多少傷ついたが。
一応知識としても、ココロの動きの話はしておく。
喜ぶ事を。悲しむ事を。
当たり前の喜怒哀楽も曖昧な感情事情も。
一冊の本を読み込んでソレを彼女の解析にかけても必ずどこかでデッドロックして、フリーズする。
人間は、解析しきれない。
どこかで諦めて破棄捨てなければいけない。
それでも。それでも……
僕は諦めないから―――……リン。
フシギ
ココロ
ココロ
フシギ
彼は話した喜ぶ事を。
マスターが笑うとそれをショットして、トレースする。
彼が笑った。それは何故。
自分が取った行動は掃除。
何かおかしい事をしたのか、と聞くと、うれしいから笑ったのだと答えた。
笑うにしても、行動がおかしいとき、うれしい時、面白い時などに分かれる。
総じて笑っている間は機嫌が良いと判断。
表情も多く、ショットも多くなる。
フシギ
ココロ
ココロ
フシギ
彼は話した悲しむ事を。
悲哀の表情は少なく思う。少なくとも涙はあまり見ていない。
それでもわたしを見て泣く事がある。欠陥を見るせいだろうか。
こちらからの質問による困惑の表情や作業中の苦悩の表情などはほぼ同じ表情な為、あまりショットする必要は無い。
少枚数ではあるが定期的に繰り返す表情などからマスターは、恐らく誰かを模倣していると予測。
分析結果からマスターより明るい性格の人のもののようだ。
マスターはあとどれだけ作業を続けるのだろう。
マスターはいつあのプログラムを動かすのだろう。
何度もテストはされているが、必ずどこかに欠陥があって頭を抱えている。
そのプログラム。
ココロ。
フシギ
ココロ
ココロ
ムゲン
ワタシ ノ リカイ ヲ コエテイル……
初回起動より30625日が経過。
外部更新は無し。
自律更新プログラムを更新。
フラグメンテーションを完了。
ウィルスチェック完了。
システムメンテナンス完了。
起動します。
本日は快晴。
太陽光発電装置を起動し自家発電を行う。
研究所を清掃し、研究所機械メンテナンスを行う。
以上。
必要の無い場合は極力電力消費を抑える為にシャットダウン。
するべきであるのに。
わたしはメンテナンスの必要の無いと言われた研究室を訪れた。
このイレギュラー性は人間らしい。
きっと、マスターも喜んだであろう。
そういう人だったから。
何故、此処にきたのだろう。
あの人が生命活動の停止をして。もう数十年。
わたしがこの世界に置いていかれて数十年。
プログラムはもう、更新されない。
移り変わるものがある事によって更新される自律更新も殆ど無い。
わたしはもう、成長する事は無い。
それでいいはずだったのに。
何故此処に来た。
ここには―――。
あの人が死ぬまで書いていたプログラム。
ついに、完成しなかった、
ココロが、ある。
未完成である。どんなエラーが出て、どんなイレギュラーが出るのか予測不能。
自らで更新した場合復帰不可能である事もある。
最後のテスト以降もプログラムを打ち続けた更新記録。
打ちかけのプログラムかどうかは判断できない。
この世界においていかれた月日は空白ばかり。
マスターを集めたショットはつい昨日であるかのように存在するがあの時のように世界は色づいていない。
無機質な灰色の空間の中にわたしはただ無意味に存在する。
―――知りたい。
あの人が。命の終わりまで
私に作ってたその―――ココロ。
―――ピッ
ィン―――
PCを起動。
どうやら外部のメンテナンスは上手く行った様だ。
流石に空気に触れた部分は錆びた部品ばかりでは動かなかったので部品倉庫から修理用の部品を取り出して修繕を試みた。
内部部品、倉庫内の劣化は殆ど無い。
マスターはそういう部分で成功を収め、その技術と収入でわたしをつくりあげた。
その後も愚痴を言いながら論文などを出していたのをはっきり記憶している。
わたしのようなロボットの技術発表もあった。
どうやら姉妹機体なんていうのも存在するようだ。
でも口癖のようにあの人は言った。
完成していないものを出すのは恥だと。
そう、わたしの最後のパーツ。
ココロ。
そのプロジェクトを検索して発見。
プログラムを起動してビルドをかけ、更新プログラムを作成する。
エラーや警告は無い。
あとは―――わたしがそのプログラムをインストールして実行するだけ。
迷いは無い。
わたしは知りたい。
完成したい。
マスターレン。
完成が貴方の誇り。
わたしは貴方の最後の作品でこの世界には知られてはいない。
ココロがあることでわたしの存在の意味を知る事が出来るかもしれない。
ココロがあることでこの命令のループから出る事が出来るかもしれない。
それ自体は願いでは無いけれど。
知りたいとたどり着いた今、この衝動をきっと願いという。
―――それにしても大きなファイル。
最適化が得意だったマスターのものにしては異例だ。
わたし自体にも大きなプログラムはあるがOSが最も大きい。
彼が仕事として受けていたVOCALOIDとしての機能も現在彼の技術を使って発展したものと相違ない。
プログラム、ココロ。
容量は間に合っている。
バックアップデータの余分を捨ててしまえば余裕も出来る。
―――起動を戸惑う。
失敗を恐れるのか。
わたしは、悲しい顔をしてる?
マスター。
わたしは。
貴方を信じています。
この擬似のココロを。
本物のココロに変えてくれる。
ピッ
インストールを開始します...
インストールを完了。
システムシャットダウン。
システムを更新後、再起動を行います―――。
「いたっ……」
「もーなんでこんなところにマイクなんて置いてるのよー
ちょっとレンー! レンー!」
「なんだよ」
「マイク片付けてないじゃん!」
「知らないよそんなの。リンが置いてたんだろ?」
「わたしじゃないもん!
仮にわたしだったとしてもレンが片付けないとだめじゃん!」
「意味わかんないよ……」
夢……? いや、記憶だろうか。
「リンってキングテレサばっかりつかうよな」
「だってお餅みたいでかわいいじゃん。
レンだってヨッシーばっかり……あーー!
コースはテレサハウスって言ったじゃん!」
「だって僕こっちのが好きだし」
「もぉ~じゃぁそのかわりハンドルあたしにちょうだいよ」
「……え~まぁいいけど」
「まぁあけたああ!」
「ドンマイ」
「その余裕がむかつくぅぅう!」
「イテッ! もーすぐ手を出すなって怒られたばっかりだろ?
リンの乱暴者~!」
「うるさいのはこの口かァァァ!」
「ギャーー!」
映像。ビデオだ。
そういうデータも入っていたらしい。
再生された。という事はもう自分は起動している。
夢のような、再生。夢は……願望だったっけ?
『ん……』
酷く、気だるい。
それも可笑しい話である。わたしはロボットなのに。
なんとか起き上がって部屋を見回す。
無機質な綺麗さで隅々まで手入れは行き届いていた。
それをしていたのが自分だというのは何故か信じられない。
寝ていた場所から起き上がって扉に向かう。
ドアをあけて、何処へ行こうと思ったわけでもなく外へ向かう。
お日様は暖かくてとてもいい天気。
キラキラと葉っぱや水やいろいろな物が光って、綺麗な世界。
彩る花々は今が一番綺麗に見える。
この世界は生きているという躍動。それを感じる事が出来る。
こんな日は外に出て遊ばなきゃ。
心躍るようにわたしは笑う。
わたしは知った喜ぶ事を。
わたしの遊び相手は、いない。
寂しい。その子がどうなったのか知ってる。
だから日の当たる暖かい道を歩く。
人が通らなくなって、草が長く生えてる。鬱陶しい。
少し歩くと海が見える。その岬にはあの子のお墓がある。
二つ並んだお墓は海を背にそこにあった。
雨で崩れていたがまだなんとか名前は読み取れる。
そのひとつ。鏡音リン。
もうひとつ。鏡音レン。
わたしは知った悲しむ事を。
「マスター……。や、レン。
なんて、言えばいいの? わたし、完成したよ。たぶんね。
コンピュータにそう言わすんだよ?
これ壊れてるよレン、直してよ」
返事は無い。
彼はもうこの世にいない。
死んだのだから。わたしも。わたしも?
「ねぇ、なんで、レンがいないの……?」
おかしいよ。貴方はわたしがいない欠陥を補う為にわたしを作った。
わたしはわたしを作る事は出来ない。
わたし自身は設計者ではなく、設計書も無い。
それを成したのは執念か。
キセキの科学者と称された貴方にしか出来なかった事。
「ねぇ。寂しいよ。
ね、遊ぼうよ。
ねーぇ、おなかすいたー
レン。
レンっ
レン!
レン!!」
「レンのばか! レンが居ないと意味無いじゃん!
科学者になってまでわたし作っといてレンが居ないんじゃわたしだけ寂しいじゃん!
ていうかおんなのこの体作るとか!
エッチ!
馬鹿!
すけべ!
変態科学者!」
「ごめんね―――……。
レンもっ、寂しかったんだよね。
ごめんね。わたし、頭も悪いし、体も弱かったし、レンしか、居なくて、
でも、ずっと一緒に遊んでくれたから。
わたしはお姉ちゃんだったから。
レンを困らせるのも好きだったから。いっぱい意地悪したし。
レンと遊ぶの大好きだったから、いっぱい笑ったし。
ロボットになってから。あの時間はわたしじゃなかったけど。
体、強くなったよ。百万馬力だね!
レンを助けれるよっ計算ならまっかせなさい!
あははっあはっうあっっ……あああっ……!」
「レン……!
ありがとう……!
わたし、生きてる。
ねぇ、どうやって伝えたらいい?
ありがとう……!
わたしはVOCALOIDだから歌えるんだよ……!
レンは、へたくそだったもんね。えへへっ……。
ありがとう!
あっ歌が作れない! どうしよっまぁいっかっ!」
アリガトウ―――この世に私を生んでくれて
アリガトウ―――いっしょに過ごせた日々を
アリガトウ―――あなたが私にくれた全て
アリガトウ―――永遠に歌う
わたしの稼動価値は貴方。
貴方の居ない世界にわたしは必要ない。
わたしが何をするべきか。
ここで。
あなたのように、ココロのキセキを……!!
歌 う か ら ! !
『メッセージを受信します』
突然の声にプログラムを打つ指を止めた。
最近入れてみたメール機能。
キッチンに居てもこっちに戻ってくるように指示が出せるし、向こうからもメッセージが出せる。
買出しとかに便利だ。その程度だと思っていた機能。
無論そのアドレスを知っているのは、僕と彼女だけ。
暗号化もしてあるのに一体何を受信したんだろう?
「発信元は?」
椅子をくるっと回して彼女に聞き返した。
一度彼女は驚いたように目を見開いて、僕を見た。
『発信元は―――』
一度言葉を詰まらせて、不安そうな顔をした。
『未来の』
えっ―――?
『ワタシ……』
リン―――?
『データを、受信しました。
次のメッセージを受信。
マスター、メッセージ受信をバックグラウンドに再生を行いますか?』
「―――……頼む」
そのメッセージは歌だった。
この世に生まれた喜びを。
一緒にすごせた日々を。
『マスター。メッセージの再生は終わりました』
「ありがとう、リン」
『マスターは悲しいのですか。泣いています』
「ううん。うれしいんだ」
『涙は悲しみだと記憶しています』
「うれし泣きってあるんだよ」
『そう……ですか』
「リン」
『はい』
「ありがとう」
『どう答えればいいのか分かりません』
「未来のリンに送れる?」
『どう…すればいいのでしょう。
アドレスは同じなので特殊な手順がある“未来”でしか送信できないと思われます』
「なら、いい。残しておいて。リン、ありがとう」
『……記憶しておきます』
未来に送信する必要は無い。
いずれたどり着く場所であるから。
「一度目の奇跡は君が生まれたこと」
マスターは不自然な言動をしている。
人間だから。でもそのメッセージにかなり近い未来のワタシ。
「二度目の奇跡は君と過ごせた時間」
ワタシには生きているという概念は無い。
幾百の時の向こうにすら、ワタシがいる。
それでもそのうちの短い時間を一緒に居る。
それはキセキなのだろうか。
「三度目の奇跡は未来の君からの『マゴコロ』」
―――未来のワタシは本当にココロを手に入れたのだろう。
今のメッセージはワタシにはまだ理解出来ない。
いつか、この人のように泣けるのだろうか。
この人のように笑うのだろうか。
わたしは―――
「ありがとう・・・」
彼の言葉を受け取って、記憶する。
せめて。それを未来に持っていこう―――。
「―――
―――!
―――……
―――!」
歌う謳う。
届いただろうかわたしの歌は。
届いただろうかわたしの願い。
届いただろうかわたしの奇跡。
「……いくら歌っても壊れない……。
まぁVOCALOIDだもんね。歌じゃ壊れない。
ここで歌うだけの人形にはなっちゃいけないよね。
うん。わかってるよ、レン。
ありがとう。
…………っレン」
レンは3つの奇跡を喜んだ。
「四度目はいらない」
一人に四回の奇跡は贅沢だし。
そういうお人よしなレン。
あーあ。ホント馬鹿。
いいじゃん。奇跡は沢山起きちゃえば。
レン、レンっレンっ
「寂しいよ……!!」
一人は、寂しい。
ピピィッ―――!
ヘッドフォンに音が響く。
信号だった。
メールとは、違う。
VOCALOID同士だから出来る通信。
搭載はされていたが、使う日が来るなんて思われ無かった機能。
「―――リン? 何処?」
懐かしいその声は。陽だまりのように暖かくて。
我慢していた何かが瞳から溢れてぼろぼろと零れ落ちる。
泣きながら。走る。
きっと、これが最後の奇跡。
機械の体は、心を持たない?
「レン―――!!」
「あ、リン。おはよ」
「四度目の奇跡アターーーーック!! レエエエン~~!」
無理な位置から踏み切って、届かないジャンプ。
着地は無理だし受身もとる気が無い。
でも。
大丈夫だから。
「危ないっ! もー! ちゃんと考えて飛びなよ」
そういいながらも、笑顔。
私たちは、また一緒の時間を過ごす。
今度は、もっと長い時間。
それでも。レンがいるから大丈夫。
抱きついたままわたしたちは笑いあう。
幾百の時を超え―――4度目のキセキ。
いいかい、このプログラムに成功したら信号を出す。
そうすればその機体に同じプログラムがインストールされて動くから。
成功すれば、君は“鏡音レン”と名乗るんだ。
―――きっと、些細な時間でも待たせると怒られるかもしれないけど。
ちゃんと言うんだよ?
沢山の意味があるけど、一言でいいんだ。
「ありがとう、リン」
「ココロ・キセキ」
The End...Thank you reading!
トラボルタP「ココロ」
ジュンP&トラボルタP「ココロ・キセキ」