うぅ……呼び鈴が鳴ら無いから2回も逃した。
※注意! このページは二次小説です!
本家 ニコニコ動画 ココロ 様を元にした二次創作作品です。
そういったものが苦手な方はご注意ください。
また、本家様などから意見が着ましたら消そうと思います。
というわけでお待たせココロ。
リンレンで書こうと思ったけど、駅谷が書かなくてもどっかにあるよ。うん。
きっとピアプロさんあたりにモリモリわいてるはず。あそこが何なのかは知らないんだけどね。
てかココロ、うちのハクにはそれらしいのがある設定なのでどうしようかと思いましたが……何とかしました。
ああ、長々と失礼。
んじゃま、本編どうぞ。
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『あいつ才能ないよな』
『楽器も普通だし』
『歌うのは止めればいいのに』
『それはひでぇ。でも結局ニセモノっぽいんだよな』
―――起動した。
前回のスリープから15時間。
現在時刻は、午後六時。
システムチェック、前回の更新は反映された。
リブート完了。
視線を上げて状況を確認する。
物体認識開始。
ベッド、椅子、机、パーソナルコンピュータ、プリンタ……。
場所特定。いつもどおりマスターの部屋だ。
予定表確認、マスターは不在。
予定表では学校。
もうそろそろ帰ってくる。
夕飯を作って待とう。
『足んないんだよね』
『そうそう。気持ちってか心が入って無いんだよねー』
……ココロって何だよ……
今日は昨日の残りの材料と、正味期限の切れそうな材料を使って少し時間の掛かる料理を作ってみた。
野菜は細かく。
マスターはきっとピーマンが入ってることに気付かない。
新しくダウンロードしたレシピ。
マスターは気に入ってくれるだろうか。
マスターが喜んでくれる料理は沢山記憶している。
でもそればかりもいけない。
新しい料理も楽しみにしてくれてる。
だから作る。
マスターの為に。
逃げた。
オレは、何だっていうんだ……っ!
扉を開けた音に反応して振り向いた。
『マスターっお帰りなさいっ』
ここに帰って来るのはマスターだけ。
『今日は新しいレシピで作ってみたんですっ』
ちょっと興奮気味に言ってみた。
今日の料理は出来が良かった。
視覚的にはかなり見本に近い。
味覚はプログラムにはならない。
甘い成分が多いと甘いのだろうと想像は出来る。
私の身体のプログラムは実はすごく曖昧なのだ。
触覚だって冷暖固柔滑止の判断に過ぎない。
でもそれは情報で決して「感覚」として捕らえる事はない。
そんな中でも感情なんて最たるもの。
あたしたちにあるのはプログラムで構成された情報群だけなのだから―――
「要らない」
あたしに感情なんて、無い。
マスターは部屋に戻ってベッドに倒れる様に転がった。
『……マスター』
料理にラップをして冷蔵庫に収める。
マスターが心配だった。
ワカラナイ。
マスターがどうしてしまったのか。
不思議だ。
あたしに出来る事は少ない。
不明を解決する為に、訊くしかない。
『どうしたんですかマスター』
あたしが訊いてもマスターは答えず、しばらくぼぅっと天井を眺めていた。
ぽっかりと開いた空虚な時間。
マスターは何も言わず動かない。
要するに不機嫌なのだ。あたしはスリープに入ることにした。
『マスター……あの。あたしはスリープに入ります。
今度はマスターの指示があるまで起きません……』
「……」
何も言わないマスター。
温度の無い態度は酷く冷たい。
悲しいと思った。
だから涙が流れてあたしはそれを拭いながらいつもの場所に―――
「……ココロって何だ?」
突然マスターの声を聞いた。
マスターはベッドに寝転がったままだけど不思議そうにあたしをみていた。
ココロ。
アンサーは辞書にある。
『知識、意志、感情などの元、また芸能などのもつ深い意味。
非常に多様な意味を持つ言葉』
そもそも心自体が曖昧で―――不確定。
「……俺の歌にはココロが無いって言われたんだ。
全力で歌う事はココロを込めることじゃない。
俺は―――どうすればいいとおもう?」
ココロは不思議だ。
ヒトである彼ですらそれに悩む。
アンサーを出す前に聞いておきたいことがあった。
『……マスターは歌うのが嫌いですか?』
マスターがあたしに歌を託す理由はそうなのだろうか。
「いや……嫌いならバンドなんてやってないさ」
マスターは虚ろに言って深い溜め息を吐いた。
あたしにはマスターの為のアンサーは用意できない。
辞書の上の言葉は―――人により意味が違って来る事が多い。
あたしが知ってるアンサーはマスターのアンサーでは無い。
『あたしは』
だから、あたしの為のアンサー。
あたしが歌う理由。
それは……。
『マスターがっ喜んでくれるからです』
あたしにはココロは分からない不思議なもの。
でも―――
あたしは知った。喜ぶことを。
あたしの声を好きだというマスター。
同じように、あたしも貴方の歌が好きだから。
マスターと一緒にいて沢山歌って。
あたしは知った。悲しむことを。
マスターが悩んで悲しい間、あたしもずっと悲しんでいる。
何度もあたしはマスターには相応しくないと泣きそうになった。
その度に笑ってマスターは―――悪いのは自分だと言う。
『あたしはっ。
マスターに笑っていて欲しいんです。
沢山歌を歌わせて欲しいんです。
きっとマスターに会わなければあたしはこんな風に言わなかったです。
無限に確率のある自立プログラムにここまで言わせれるのはマスターだけです。
マスター。
あたしの全ては貴方の歌を歌う事。
あたしの一つめの奇跡はマスターに会えた事。
二つめはマスターと過ごせた時間。
三つめはマスターのくれたこの、
ココロ―――』
マスターはあたしを見る。
間違って無い。
あたしにはマスターを想う事が出来る。
マスターの為に喜んで、悲しんで、歌うのだ。
マスターのVOCALOIDとしてそれだけが出来なければマスターの側に居る価値なんかない―――!
『マスターが歌えないと言うのなら、あたしに歌わせて下さい』
あたしの声はマスターが命じればマスターのために歌う。
力不足は否めないけど、一生懸命再現する。
『疲れたのなら休んで下さい。マスターには元気でいて欲しいです』
マスターが疲れたのならいつだって休んでくれていい。
あたしはいつまでも待つことができるから。
マスターは呆然とあたしをみて止まっていた。
そして今―――
ココロが動き出した様にボロボロと涙を零した。
『ま、マスターっ!?
あっあのごめんなさいすみませんごめんなさい!
そんな、あたしなんかの言う事なんて真に受けなくていいですっ!
受け流して縛り付けて海に捨てくださいーっ』
「―――っホント、ハクさ」
マスターは顔を下げてゴシゴシと拭った。
口の端が笑っている。
あたしはまた笑われるようなことをしてしまったようだ。
「人間やってるよなっ……」
それは褒められたのだろうか。
マスターはベッドから起き上がってあたしの頭を撫でてそのまま通り過ぎた。
妙に楽しげで、風呂に入ると言って部屋を出て行った。
ココロについて思考する。
彼が教えてくれたのは楽しいと言う事。
マスターが笑っているからあたしは歌う。
それを喜びと名付けた。
彼が泣く理由は悲しいから。
マスターが悲しいとき、あたしも泣きそうになる。
それを悲しみと名付けた―――。
人の心は深く切ない。
あたしがこんな風に感情に類似した現象を抱えたのはすべてマスターのおかげだ。
感謝してもしたり無い奇跡。
あたしがマスターに返せるモノで返さなければいけない。
あたしには何が出来るだろう―――?
「ハク~?」
『あ、はい』
「飯、もらうわ」
『あっはいっすぐ準備します』
食事の準備はすぐに整った。
さっきいれたばかりなのでレンジも短くて済んだ。
マスターは頭にタオルを乗せてダイニングに現れるといつもの席に座る。
「ん? 新レシピかっ?」
『はいっマスターが好きそうなものを選びましたっ』
マスターは子供みたいに笑って頷くと、両手を合わせて箸を持った。
どうやら料理は成功らしく、パクパクモグモグと料理を頬張るマスター。
きっと小さいけどこれも喜び。
マスターが食べている様子を見て断片的に情報に変換する。
幸せ。
その瞬間を記憶に。
「―――ん。美味かった。ご馳走様」
『はいっお粗末さまでしたっ』
マスターが食べ終わった所にお茶のおかわりを注ぐ。
食器を重ねて流しにおくと水仕事のため袖をまくった。
「ところでハク」
『あ、はい?』
「カラオケに行かないか」
衝撃が走った。
カラオケというのは簡易に音響設備を整えた場所で“歌う”ことができる空間。
正式に使えばカラオケボックスという。
“空オケ”はオーケストラの伴奏だけを録音したものを歌っていた事に始まる。
確かに毎日のように歌ってはいるもののマスターと一緒に歌う機会は滅多に無い。
行きたい。行きたいに決まっている。
『行きます!!! 今からでも今すぐでも!!!!』
「落ち着け。選択肢が速攻しかないぞ」
スパパッと洗物を終えて手を拭くと最短の動線でマスターに近寄る。
『落ち着いてますマスター! この前打ち込んでくれた新曲とか!
カバーもいくつか打って下さっているので歌えますし!』
「ち、近い、顔近い、ハク」
『こうしてはいられません! 速攻で行きます!
予約抑えますね! オールでいいですよね!! 飲み放題つけますよ!?』
おでこが触れるぐらいマスターに寄って聞く。
抑えきれない衝動がそうさせるのだ。
「ああもう……好きにしてくれ」
マスターがため息をつくとコンっと額どうしが触れ合った。
その様子がとても楽しくてあたしは笑う。
『ではっ行きましょう―――っ!』
今言える―――
本当の言葉
捧げる
あなたに
アリガトウ。
あたしと一緒に居てくれて。
アリガトウ。
あたしに歌を与えてくれて。
アリガトウ。
あなたの与えてくれる毎日がこんなにも輝いて―――楽しいから。
できるなら永遠に歌うことで貴方に返せればいいのだけれど。
それは無理だから。
精一杯気持ちを込めて、
あたしの歌で返そう―――。
「………………おお。イマイチ」
……ガーン。
まさにOTL。
袖のディスプレイで「(TAT)」がスクロールされる。
「はははっ気にすんなって。実際こう聞くと直せる場所分かるしさっ」
それでも楽しそうに拍手をくれるマスターに頭を下げて頑張ろうと思った。
返せると……いいなぁ……。
それは遠い話な気もする。
えいっこうなったらこの場で修正点を聞いて直そうっ。
さっ次、何を歌おう?